事実婚とは、法律上の婚姻届を提出しないまま、実質的な夫婦として生活をしている状態のことです。事実婚を選択している理由は、カップルごとにさまざまです。たとえば、同性カップルのように、法律上なんらかの障壁があるケースや、入籍自体にメリットを感じていないケースなど多種多様です。
事実婚のパートナーには相続の権利は一切ない
事実婚のパートナーは、相続人に該当しません。パートナーが亡くなったとしても、事実婚であれば原則として遺産は相続できないということです。
最近では、市区町村がパートナー証明などを発行しているケースや、遺族年金のように、事実婚であっても法律上の配偶者と同様に受給できる公的制度も存在しますが、法律上の籍を入れていない以上、長年同じ家で暮らし、生活を支え合ってきたとしても、「配偶者」には該当せず、したがって、相続人にもならないのです。
結論からいえば、事実婚のパートナーに「遺産」を残すことはできません。
事実婚のパートナーに財産を残す方法
しかし、遺産という形ではなく、「財産」を残す方法はいくつかあります。
1.生命保険に加入し、受取人にパートナーを指名する
自身を被保険者とする生命保険に加入し、受取人をパートナーにすることによって、保険金をパートナーに遺すことができます。 しかし、生命保険の受取人には一定の制限が設けてあることも多く、保険会社によっては、事実婚のパートナーを受取人にできないケースもあります。加入時にしっかり確認してください。
2.パートナーに「生前贈与」する
生前贈与は、贈与する相手との関係に制限はないので、パートナーに生前贈与することも認められます。ただし、年間の贈与額が110万円を超える場合は、贈与税の申告が必要になります。注意してください。
3.パートナーに「遺贈」をする
遺言書を作成して遺言書を作成すれば、パートナーに財産を遺すことができます。これを「遺贈」といいます。しかし、戸籍上の配偶者や子どもがいる場合、遺留分が発生し、請求されれば、法定相続分の50%を渡さなければなりません。
4.パートナーを「特別縁故者」にする
被相続人人が亡くなったあとにパートナーが「特別縁故者」であることを家庭裁判所で申し立てる方法もあります。以下の条件が満たされれば、遺産を受け取れる場合があります。ただし、特別縁故者として認められるケースは、非常に限られています。
※事実婚のパートナーが特別縁故者になるケース
・被相続人に法定相続人が1人もいない
・被相続人の看病や介護を行った
・被相続人と生計を同じくしていた
・その他特別密接な関係にあった
遺言する場合は公正証書が必要
事実婚のパートナーに遺言で財産を渡す場合には、次の点に注意しましょう。
1.相続ではなく遺贈になること
遺言の書き方は、「相続させる」ではなく「遺贈する」です。「相続させる」と記述すると、パートナーへの遺贈が無効になってしまうので注意しましょう。
2.遺留分に配慮する
事実婚のパートナーに財産を残す場合、現在、もし法律上の配偶者や子どもがいるのであれば、当然ながら、かれらの気持ちも尊重しなければなりません。
たとえ、事実婚パートナーに財産のすべてを遺贈する旨の遺言書を残したとしても、法律上の配偶者や子どもには遺留分が認められます。したがって、遺言書の作成においては、遺留分に配慮した内容によって、財産分与割合を決めるべきです。
無駄に相続トラブルの種を残す必要はないのです。
3.自筆証書ではなく公正証書で
遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2通りがありますが、事実婚のパートナーに財産を渡す場合は、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言で作成しましょう。
公正証書遺言は、公証役場で公証人と2名の証人の立会いのもとで作成します。費用や手間がかかりますが、公証人のチェックも入るため、無効になる可能性がかなり低くなります。
もし遺言書が無効となってしまえば、事実婚のパートナーは、財産を一切受け取ることができなくなります。したがって、より確実である公正証書で作成しておくと安心です。
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