生命保険を受け取る際に、税金がかかる場合があります。今回は税金がかかる保険契約について、またどれぐらい税金がかかるのかについて解説します。
税金がかかる保険金とかからない保険金
いわゆる保険金と呼ばれるもののなかでも、税金がかかるものとかからないものがあります。最初に整理しておきましょう。
1.税金がかかる保険金
以下の保険金については、それぞれ以下のような税金がかかります。
①死亡保険金…相続税もしくは贈与税
②満期保険金…所得税もしくは贈与税
③解約返戻金…所得税
個人年金保険…所得税若しくは贈与税
2.税金がかからない保険金
以下の保険金については、税金はかかりません。
①医療保険・がん保険・介護保険
②その他(高度障害保険、リビングニーズなど)
課税対象になる保険金
死亡保険金や満期保険金には税金がかかる場合がありますが、契約者・被保険者・受取人が誰になるかによって、税金の種類が異なります。それとともに課税額が変わるケースもあります。詳しく見ていきましょう。
1.遺族が受け取る場合
1)契約者と受取人が一致する場合
たとえば、本人が契約して保険金を支払い、配偶者や子どもを受取人に指名した場合は、「みなし相続財産」として、受取人に相続税がかかります。ただし、一定の金額以内であれば、税負担を軽減する「非課税限度額」という優遇措置が設けられ、以下の範囲で課税免除が認められています。
被課税限度額=500万円×法定相続人の数
2)契約者と被保険者、受取人が異なる場合
死亡保険金の契約者、被保険者、受取人が別人である場合は、贈与税がかかります。たとえば、妻が亡くなった場合のために死亡保障を夫がかけ、保険金の受取を子どもにした場合には、子どもへの贈与となり、贈与税がかかります。満期保険金や解約返戻金、個人年金も同様です。
贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与された金額が対象となります。対象額から基礎控除(110万円)を引き、残った金額に応じた税率で計算されます。
税率…10~45%
2.第三者が受け取る場合
基本的に、保険金の受け取りは配偶者と二親等以内の血族とされていますが、例外的に第三者の受け取りが認められる場合があります。具体的には、籍を入れない事実婚のケースや、同性婚カップルなどのケースです。
第三者が保険金を受け取った場合には、贈与税がかかります。
死亡保険金で相続税がかかる場合の具体的な計算例
相続税は、相続の対象となる総資産に対して課せられます。課税対象となる生命保険のほか、不動産、金融資産などの合計金額が対象になります。
相続税全体についても、死亡保険金の場合と同じように、一定の非課税枠(基礎控除)が設けられています。基礎控除除額は次の計算式で算出します。
基礎控除額=3000万円+(法定相続人の数×800万円)
2.具体的なサンプルで解説
具体的なサンプルを使って、死亡保険金で相続税ががかかるケースを見ていくことにしましょう。配偶者と2人の子ども、合計3人の家庭を例に、以下の遺産相続のケースで説明します。
1)課税対象となる相続資産
・不動産と金融資産…6000万円
・死亡保険金…2000万円
この場合の相続税は以下の計算式によります。
①死亡保険金の遺産総額への加算額…(2000−1500)=500万円
②遺産総額…(6000+500)=6500万円
③課税遺産総額…(6500−4800)=1700万円
つまり、1700万円に対して相続税がかかることになります。
2)非課税枠の配分について
死亡保険金の受取人が複数の場合、非課税枠は個々が受けとった死亡保険金の額に応じて分配していきます。
たとえば、死亡保険金を以下のように配分したとします。
①配偶者…1500万円
②こどもA…250万円
③こどもB…250万円
死亡保険金の非課税枠は1500万円、課税部分は500万円です。課税部分の金額を相続割合で分配していきます。
3)実際の税額
それでは、実際に相続税がいくらになるか、計算してみましょう。
相続税は受け取る遺産額によって税率が異なり、計算が複雑になるため、今回の解説では、先ほどの「配偶者と子ども2人」のケースでシミュレーションし、おおまかな税額を算出してみることにします(課税額は非課税枠を勘案したうえで算出しています)。
①相続資産総額5000万円⇒10万円
②相続資産総額6000万円⇒60万円
③相続資産総額8000万円⇒175万円
④相続資産総額1億円⇒315万円
⑤相続資産総額2億円⇒1350万円
⑥相続資産総額5億円⇒6555万円
このように、財産総額が大きいほど税率が高くなることがわかります(累進課税方式)。
契約者、被保険者、受取人の関係を再確認する
夫名義の口座から保険料を引き落としたいという理由から、契約者が夫、被保険者が妻、受取人が夫になっている契約が見受けられます。
加入方法に問題はありませんが、「契約者=保険料を支払う人」なので、この契約のままだと、妻が死亡したときに、夫に支払われる保険金は、相続税ではなくではなく「所得税」の課税対象となり、相続税の非課税制度を活用できなくなるので、結果的に損してしまいます。
今回はかなり専門的で複雑な紹介となりましたが、詳しくは税理士にお尋ねください。
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